大判例

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東京地方裁判所 昭和35年(ワ)7048号・昭35年(ワ)4975号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実と判断〕原告は、昭和一四年五月一八日被告所有の本件土地を賄賂として譲り受け、その引渡を受けて、その上に本件建物を建築所有して、以来二〇年間本件土地を所有の意思をもつて平穏かつ公然に占有し続けたので、昭和三四年五月一八日時効によりその所有権を取得したと主張して、本訴により本件土地の時効取得による所有権移転登記手続を求めた。原告が本件土地を賄賂として譲り受けた理由として主張する要旨は、原告は昭和八年一一月から昭和一三年四月まで警視庁保安部勤務の警視庁技師として工場の公害保安、その設置、増設の許認可事務を担当し、一方被告はゴム製品を製造する桜護謨株式会社の代表取締役をしていて、同会社の工場が原告の担当区域たる渋谷区笹塚にあつたため、互いに知り合つて、原告が監督官として種々技術上の指導を与えたりして工場の発展を助けたことがあり、また原告は昭和一三年五月から商工省技師および臨時物資調整局の技師として、綿繊維、生ゴム等の配給統制事務を扱うようになつて、被告の前記会社のため特別な便宜をはかつてやつたりした関係で、昭和一三年一〇月頃自分の住宅を建てようと計画していた原告に被告が本件土地を提供してくれた、というのである。被告は右賄賂提供の事実を否認し、本件土地は単に原告がその地位を利用して借用を申入れて来たので、原告主張の日に堅固でない建物所有の目的で期間の定めなく無償で貸したものであるが、原告が本件建物を建築して本件土地の使用を開始してからすでに二〇年を経過しており、民法第五九七条第二項但書にいう「使用収益をなすに足るべき期間を経過した」ものというべきで、すでに返還時期が到来したから、昭和三五年五月一〇日原告に対し本件土地の返還を請求した、また原告の本訴提起は信頼関係を裏切るものであるから同年八月二七日右使用貸借契約解除の意思表示をしたと主張し、反訴をもつて右使用貸借契約の終了または土地所有権を原因として、本件建物収去による本件土地の明渡と損害金の支払を求めた。

判決は、原告の時効による本件土地所有権取得を否定して本訴を棄却し、反訴につき被告の主張する本件土地使用貸借契約の終了の有無を次のとおり判示した。曰く、

「被告は右使用貸借は建物所有を目的とし、期間の定めがないものであるから、民法第六〇四条および借地法第二条の規定の趣旨に照らして、契約の時から二〇年を経過したときは、民法第五九七条第二項にいわゆる契約に定めた目的に従い使用および収益をなすに是るべき期間を経過したものとしてこれを解約しうる旨主張する。同規定にいう契約に定めた目的とは、単に『建物所有の目的』とか『居住の目的』とかいうような抽象的一般的な目的をいうのではなく、更にかような建物所有または居住のため等に当該土地または建物等の使用を許したゆえんである特定の個別的具体的な目的を含めてこれを解すべきであるから、被告が主張するように単に建物所有の目的ということだけから直ちに民法、借地法の規定を援用して、二〇年の期間を経過したものとなすことはできないが、本件使用貸借が前記二において認定したような事情の下において被告が公職にある原告から受くべき種々の便宜の取扱いに対する謝礼の趣旨において、当時自己の仮宅建築のため土地を物色中であつた原告に右仮宅敷地として使用を許す目的で締結せられたということ以上にその具体的な趣旨目的を確定することのできない本件においては、原告の仮宅が現実に朽廃するまでの間その無償使用を許すという趣旨で契約が締結せられたものとみるのは相当でなく、一応原告が自己の仮宅所有のために土地を使用したというに足りる相当期間(換言すれば原告が仮宅建築のため投下した資本を十分に回復したと認められる期間)右使用を認めればその後は貸主たる被告において民法第五九七条第二項の規定によつて解約をなしうるものと解するのが相当であり、その他特段の事情の認められない本件においては、契約締結の時から二〇年以上を経過したときは、右相当期間を経過したものと解して妨げないというべきである。しかして本件使用貸借契約締結の時から二〇年以上を経過した昭和三五年五月一〇日被告に対して右契約を解約する旨の意思表示をしたことは当事者間に争いがないから、本件使用貸借契約は、同日限り有効に解約されたものといわなければならない」。

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